自分史 第16話 第二章 ちょっと寄り道して 君住む街へ

自分の歴史

過去のことも分かっていて受け入れてくれた新天地の小学校の校長先生は

私の中学の時の英語の先生だった。

 

同じ教育大の美術科出身ということもあり

私をこよなく可愛がってくれた。

もう亡くなられたが、私の過ちのことなどまったく触れず、

教師としての力量を認めてくださり、どこまでも応援してくださった。

心より感謝。

 

私は新天地に移ると同時に旧姓に戻った。

「水野由美」

そして私はここで再び、可愛い1年生を担任させていただくこととなり、

先生集大成という1年を送った。

新天地でも1年生担任

新天地でも1年生担任

春の遠足

春の遠足

先生集大成…

そう、私はこの1年で教師を辞めることになる。

一生教師でやっていこうと思っていたのに。

 

この頃のことを、以前、文章力養成講座を受けた時「風」というテーマで書いたので

それをここに書き写します。

 

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「春風と共に」

 

「春風と共にやって参りました。水野由美です」

それは転任した、私の初めてのあいさつだった。

前の学校とは明らかに違う、少し暗い雰囲気と人を受け入れないような職員室の空気、

その中でとっさに浮かんだ言葉だった。

同時にそれは、この空気を変えてみたいという私の決意にもなった。

 

 以前勤めた学校は、研究指定校だったこともあり、若く元気な先生が多く熱気にあふれていた。

そこへいくと、今度の学校は若い先生が多い割には元気がない。

私は、前の学校で培った知識ややり方をここでも浸透させたいと思った。

幸いなことに担任は私の望んだ一年生。

楽しい教室の掲示物づくり、分かりやすい授業の取り組み、

何よりも心がけたのは、教室や職員室での笑顔だった。

 

5月を過ぎると、時々他の先生が私の教室をのぞきにきて、そのうち楽しい掲示物を他の教室でも見かけるようになった。

職員室の空気にも慣れた頃、隣の席の若い男の先生が、

「赴任したときの挨拶、あれよかったよ。由美さんその通りだと思うよ」

と言ってくれた。

一年間無我夢中で取り組んできた学級経営も、そして教員生活も結婚ということで退職することになった。

でも、担任した子どもたちには、なかなか言い出せずついに終業式の日がやってきた。

一年間みんなと楽しく生活できたことを喜び、最後に

「先生は、これで『先生』を辞めます」というと、

「えーっ」と悲しそうな声。

 

「先生を辞めて、結婚して新しい仕事をします」というと、

「えーっ」と今度は少し明るい声、そして

「おめでとう」という声とともに大きな拍手が沸き起こった。

教師冥利につきる。

 

その年、寒く長い冬のせいで開花の遅れた梅が咲き、桜の花も咲こうとする頃、

私は教師生活に終止符を打った。春風と共に退職です。

季節はまた廻りくるけど、いつも春風のようでありたいと思う。

 

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A4用紙1枚分の文章にその1年を綴った。

一生の中で「清々しい」と形容詞をつけられる時期があるとすれば、

まさにこの時期だったと思う。

終業式を終え、教師を終えた翌日3月21日。

私は再びウェディングドレスを着た。

 

 


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